永田豊志氏インタビュー

「革命的フレームワーク『図解思考』 ~知的生産性を高め、人々に貢献する~」第2回

聞き手 / PE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎

 2010年、ASPアワードグランプリを獲得した成長ベンチャー、株式会社ショーケース・ティービーのCOOであり、『図解思考』『最強フレームワーク』などのベストセラー作家でもある永田豊志氏は、仕事の効率化を図る手法を研究する知的生産研究家として多くのビジネスマンに支持されています。インタビューでは、日々の経営や仕事に『図解思考』をどのように活かしているのか、アイデア・新規事業を生み出す秘訣についてお話いただきました。

■アプトプットに合わせてインプットする

― 本を書くきっかけが、社内セミナーのためだったり、自分自身が勉強したことをアウトプットするためだったりしたことについてはとてもよく分かりました。しかし、普通の人にとっては本を出すのは簡単なことではないと思いますが、永田さんはどのようにして作家としてデビューされたのでしょうか。

 CGキャラクターの版権ビジネスをしていたときに、いろいろな出版社の方から取材を受けていましたので、そのときのお付き合いがありました。また、自分自身がメディアファクトリーにいたときに、本を選定したり企画を選定したりする仕事をしていたことが大きかったと思います。頑張って原稿を書いて出版社に持ち込んでも、必ずしも企画が受け入れられるわけではないと分かっていましたから、全部書いてそれを後で否定されるということがないように、まず自分はこういうものを書きたいんだというプレゼンテーションをしっかりやろうと思いました。つまり、ビジネスと同じで、事業計画のプレゼンテーションをするときと同じようなことを、出版するときもやったんです。それが受け入れられたら、アウトプットに合わせてインプットをすればいいじゃないかというように考えました。
 各出版社さんにプレゼンテーションをしていった中で、良いねって言っていただけた出版社さんから本を出させていただくことになったんです。

― 永田さんはもともと出版の世界にいらして、専門書を書かれていたので、全くの新人ということではないかもしれませんが、ご自分の本が出来ていく過程や書店で平積みにされたり大きなコーナーで取り上げられているのを見て、どのように感じますか。

 光栄ですね。自分自身が勉強している中で、面白いなと思ったことや役にたつなと思ったことを書いていますので、出来上がった本は、大学の教授とかではなくて、みんなと共有するような成果物だと思っています。ドラッカーのように、何十年前に書いた本がいまだに通用する素晴らしい本とは違って、まさに今、自分自身が面白いと感じたものをみんなにもっと使ってもらいたいという想いで書いています。

■知的生産性を高めるフレームワーク、仕事術、図解思考

― 永田さんが書かれた5冊の内容を、これから本を手に取る読者に分かりやすくお伝えいただけますでしょうか。

 カテゴリとしては大きく3つになっていまして、デザイン的にも3種類あります。

 1つ目のカテゴリは、『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』と『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』で、フレームワークをまとめたものです。『最強フレームワーク』はどちらかというと左脳型で分析を目的にしたビジネスフレームワークになります。既存のコンサルタントとか、経営学者とかが編み出した経営や仕事を効率化するためのフレームワークを使ってより生産性を高めていきましょうというネタ本です。『発想フレームワーク』は、その右脳版です。ビジネスだけでなく日常生活でも優れたアイデアが今後はより重要視されてくると思います。アイデアというものはクリエイターが思いつきで出すものではなく、きちんとした手順を踏めば誰でも優れたアイデアを思いつくことができるんです。そのためのフレームワークを紹介する内容になっています。

 2つ目のカテゴリは『結果を出して定時に帰る時短仕事術』になります。「結果を出して定時に帰る」というサブタイトルの通り、限られた時間の中でどうやって最高の成果を出すかにこだわって、いろいろなティップス(コツや豆知識)をまとめたものです。

 3つ目のカテゴリが「図解思考」です。『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『頭がよくなる「図解思考」の技術』の2冊ありまして、できる人は図で考えるということなんです。単に図解を描けるようになりましょうということが目的ではありません。情報を整理したり、自分なりに理解したりするときに図にすると理解が深まるので、矛盾とか抜け漏れとかがなくなりますし、より記憶に深く定着して、人にも上手く伝えることができるようになるんです。ということで、本では頭の中を図にしましょうということを言っています。具体的なアウトプットとして、手帳やメモ等も箇条書きや文章の羅列ではなく図にすることで、言葉が生み出す齟齬がなくなりますし、図を活用することでより短時間で多くの情報を第三者に伝えることができるようになるんです。

― 実際の手帳やメモを見せていただいてもよろしいでしょうか。

 これは打ち合わせメモの例ですね。ある研修会社さんに、当社のマネジャー研修をお願いするときに、どのような形でやってくださるのか聞き取ってメモしたものです。

 ちなみにご紹介をした5冊は連携していまして、基本的には知的生産性といいますか、優れた結果をより少ない時間で出していくためにどうしたらよいかということをお伝えしています。考え方の枠組みだったり、情報の整理の仕方だったり、具体的な行動計画の立て方だったりをそれぞれまとめたものになります。

― この全体像は最初の頃から見通して出版されたのでしょうか。

 全然そんなことはないですね。やりながらテーマが膨らんでいきました。私自身が元編集者なので、どういう本が売れるのかという分析を含めて企画をたくさん考えます。タイトルやレイアウトも自分で考えるのですが、企画のテーマ設定を考えていく中で範囲が広がっていったのです。

― 5冊の中で一番売れているのは『頭がよくなる「図解思考」の技術』でしょうか。

 そうですね。今7万部ぐらいで、14刷されています。
 ビジネス書の世界では、1冊出しても数千部で終わるのが当たり前と言われていますので、まずまず売れていますね。私としては、部数もさることながら、過去に出した本を定期的に読んでいただけているということが一番うれしいです。やはり一過性のブームで終わらせたくないので、自分なりに考えたメソッドを実際のビジネスシーンや生活で使ってもらえていると、みんなと共有するという出版の目的が果たされてうれしく感じます。
 また、どの本も台湾と韓国でも出版されていまして、韓国の読者からお便りをいただくこともあります。クレームも激励も直接聞きたい派なので、著書にはメールアドレスを公開しています。

― 「図解思考」を読みますと、世の中のあらゆることはすべて四角と矢印で表現できるという革命的なことを言われていますが、少し噛み砕いてご説明いただけますでしょうか。

 昔から、難しいことを難しく言う人は物事を本当はよく分かっていない人だと思っていまして、難しいことをいかに分かりやすく伝えることができるかが、とても価値のあるスキルだと考えていたんです。お茶の間では池上彰*8さんがまさにその良い例だと思いますが、難しいことを分かりやすく伝えるスキルであれだけ活躍をされているので、そういったスキルは、非常に大きなビジネスチャンスにもなるし、大切なスキルだと思うんです。
 これまで「図解」といわれている本のほとんどは、図解自体が複雑で、とても素人が書けるものではないものが非常に多かったんです。図解で分かるなんとかかんとかとかいうタイトルの本がいっぱいありましたし、ビジネスで図解を使いこなそうという本もたくさんあるのですが、図解自体を読みこなすのが大変だなと感じていました。私としては、どういう複雑系のシステムでも、細かく虫眼鏡でみていくと、最後にはものすごくシンプルな一つのパターンが何度も繰り返されて全体の複雑なシステムになっているというものがほとんどなんじゃないかと思うんです。つまるところ、ほとんどの事象は、要素と関係性で説明できるんです。

第3回へ続く

[撮影:大鶴剛志]

*8 ジャーナリスト。元NHKのニュースキャスター。近年では、テレビ番組『そうだったのか、池上彰の学べるニュース』等で活躍。

「革命的フレームワーク『図解思考』 ~知的生産性を高め、人々に貢献する~」 全4回